曲目解説_シューマン「詩人の恋」_その4

「詩人の恋」の続きです。

9. Das ist ein Flöten und Geigen

あれは高らかに鳴り響く
フルートとヴァイオリンとトランペットだ。
その婚礼の円舞で踊っているのは、
きっと僕の最愛の人だ。

ティンパニーとシャルマイが
響き、轟いている。
その狭間で愛らしい天使たちが
すすり泣き嘆いている。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

もう、やけっぱち!!

d-mollの激しい音楽です。

婚礼は本当に、彼女のものなのでしょうか?
それとも、そう妄想しているだけでしょうか?

10. Hör’ ich das Liedchen klingen

かつて愛した人が歌った
あの歌の響きを聞くと、
激しい苦痛に
僕の胸は張り裂けそうだ。

憂うつな願いが
僕を森の高台へ追い立てる、
そこで僕のとてつもない悲しみは
涙に溶けていく。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

うって変わって、g-mollの寂しい、鬱々とした曲です。

最初に練習しているときは、元気になりすぎてなかなか鬱々と仕上げられませんでした(^_^;)

本番では、鬱々とした感じを表現したいと思っていますよ!

11. Ein Júngling liebt ein Mädchen

ある若者が娘に恋をした、
その娘は別の若者を選んだ、
その別の若者は、別の娘に恋をして
その娘と結婚してしまったとさ。

娘は怒って
道でばったり出会った
ゆきずりの男を選んでしまい、
最初の若者はやりきれなかったとさ。

そいつはありふれた話だ
でもいつでも新しく耳にする話だ。
こんなことがまさに降りかかった人は、
胸が張り裂ける思いだろう。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

さあ、突然曲調が明るくなります!

お!何やら昔話がはじまった?

と思ったら、やっぱり“僕”は悲しいのね~

よくある話なのに、自分の身にふりかかるとは!と。

12. Am leuchtenden Sommermorgen

光り輝く夏の朝に
僕は庭を歩き回る。
花々はささやき、語りかけるが、
僕は黙って歩き続ける。

花々はささやき、語りかけ、
同情して僕を見つめる。
「私たちの姉妹を悪く思わないで、
悲しみに蒼ざめたお方。」

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

綺麗なB-durの曲です。

でも、“僕”は完全におかしくなっています。

「光り輝く夏の朝」も、“僕”にはウザいんでしょうね~

そして、花が語りかけてくる!(もうその時点でおかしいのですが)
しかも、ひどい恋人の味方をするなんて!!
もう、“僕”には魔女の声にしか聞こえないんじゃないでしょうか

続きます!

曲目解説_シューマン「詩人の恋」_その3

「詩人の恋」の続きです。

5. Ich will meine Seele tauchen

僕の心をうずめたい
ユリのうてなに、
ユリは僕の愛する人の歌を
そっとささやくだろう。

その歌は胸を刺し震わすだろう、
かつてすばらしく甘い時間を
僕に与えてくれた
彼女の口づけのように。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

詩だけを読んだら、まだ幸せ感がありますが、
そこはひねくれているハイネとシューマン(笑)。

この詩にインスピレーションを受けたシューマンはこの曲を、mollで書いています。

恋の終わりを予感させる、そんな感じです。

6. Im Rhein,im heiligen Strome

ラインの美しい流れ
その波間に映るのは
厳かなる
大聖堂ケルン。

大聖堂には
金色の皮に描かれた肖像画があり、
僕の荒れすさんだ人生を
やさしく照らしてくれた。

花と天使にまわりを囲まれた
聖母マリア
その瞳、その唇、その頬は
僕の愛する人とよく似ている。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

e-mollの激しい曲です。

この曲と前の曲の間で失恋をしたのは間違いないでしょう。

せっかく安らぎを求めて、大聖堂ケルンへ行ったのに、
失恋した女性に似たマリア様の肖像画を見る羽目になるとは!!!

7. Ich grolle nicht

僕は恨まない、この胸が張り裂けたとしても、
永遠に失った恋、僕は恨まない。
きみがどんなにダイヤモンドのきらめきで光り輝いても、
きみの心の闇に光は差さない、
僕はずっと前から知っていた。

僕は恨まない、この胸が張り裂けたとしても、
僕は夢の中で見た、
きみの心の闇を、
きみの胸を噛む蛇を、
きみがひどく哀れなのを、
恋人よ、僕は恨まない。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

いやいや、めっちゃ恨んどるがな!

でも、本人は大真面目です。

可哀想なのは、きみで、僕じゃない!
と一所懸命空威張りをしています。


8. Und wústen’s die Blumen,die kleinen

この小さな花たちが、僕の心が
どれ程深く傷ついているかを知ったなら、
僕の痛みを癒そうと
一緒に泣いてくれるだろう。

小夜鳴き鳥たちが、僕の心が
どれ程悲しく病んでいるかを知ったなら、
鳥たちは、元気付ける歌を
朗らかに鳴り響かせてくれるだろう。

金色に輝く星たちが
僕の痛みを知ったなら、
高い空から降りてきて
僕に慰めの言葉をかけてくれるだろう。

みんな知ることはできない、
ただ一人だけが僕の痛みを知っている、
その彼女自身こそが、
僕の心を引き裂いたのだ。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

1番は地面、2番は木、3番は空、目線がどんどん上がっていきます。

でも、みんな知らないのよね~

ピアノは16分音符でずっと動き続け、フワフワした感じです。

でも、4番になって激しく怒る!
まさに、凝縮されているって感じです。

続きます!

曲目解説_シューマン「詩人の恋」_その2

「詩人の恋」の続きです。

2. Aus meinen Tränen spriesen

僕の涙から
色とりどりの花が咲き出でて、
ため息は小夜鳴き鳥の歌になる。

かわいい人よ、僕を愛してくれるなら
この花をすべて贈るよ、
そして、きみの窓辺で小夜鳴き鳥の歌を響かせよう。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

1曲目の後奏から、アタッカで入ります。

夢見心地で恋をしている音楽です。

この辺りは、歌っていて幸せなのでストレスがありません(笑)。

3. Die Rose,die Lilje,die Taube,die Sonne

バラ、ユリ、鳩、太陽。
かつて僕が心から愛していたものだ。
もうどれも好きではない、僕が愛するのは一人だけ
小柄で、上品で、清らかな、一人のひと、
その人こそ、すべての愛の喜び
バラで、ユリで、鳩で、太陽なんだ。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

超早口言葉です!
ダーーーーーーっと歌います(笑)。

とにかく、何でも良い!美しいものを並べ立て、それらよりきみの方が素晴らしいんだーーーと歌っています!

4. Wenn ich in deine Augen seh’

きみの瞳を見つめる時
すべての苦しみや痛みが消え、
もし口づけをしたなら
すっかり元気になるだろう。

・・・
きみが「あなたを愛しています」と言うと、
僕は苦しくて泣いてしまう。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

さあ、最後の方雲行きが怪しくなってきましたよ~

so mus ich weinen bitterlich.

bitterlich って、とてもネガティブなドイツ語らしいんです。
なぜ、愛しています、と言われてネガティブになるの?

ここに、屈折した詩人の心境が見え隠れ!

あ、でも本当に1~2小節の一瞬の出来事なんです。
リートは、ほんの一瞬にいろんな感情の変化を織り交ぜます。

そこが難しくて楽しいんですね~

ところで、この詩を読んで、この詩人さんは彼女と口づけをしたと思います?

解釈は人それぞれです。

本当に一瞬恋人だった時があったのか、それとも彼の妄想なのか!

続きます!

曲目解説_R.シュトラウス_その2

前半最後、R.シュトラウスの後半です。

Freundliche Vision
懐かしい面影

O.J.ビーアバウム の詩です。
Op.48-1 同じOp.48には、有名な「Kling!」があるのですが、他の曲と合わないので、こちらを選択。
なかなか、渋い選択です!

眠りの中で夢見たのではなく
明るい昼間に美しく私の前にあるのを見た。

マーガレットにあふれる草原、
緑の茂みの奥深くにある白い家、
葉の間から神々の姿が輝く。

そして私を愛してくれる人と共に行く
涼しさの中を穏やかな心で。

美しさに満ちた平穏のこの白い家が待っている
私たちが来るのを。

・・・
訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

ピアノのゆったりした分散和音が、徐々に展開して変化していきます。

歌の旋律は、R.シュトラウスにしては、比較的おだやか。

しかし、その合間に、シュトラウスならではのオシャレな装飾がす~っと入っています。

大きなうねりで盛り上がって、静かに終わっていく、幸せですが厳かで壮大な曲になっています。

Schlagende Herzen
ときめく心

こちらも O.J.ビーアバウム の詩です。


草原を野原を一人の少年が行く、
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。
指には金の指輪が輝く、
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。

・・・

草原を野原を春の風が通り過ぎる。
山を森を春の風が通り過ぎる。
僕の心の中も春の風が通り過ぎ
静かにやさしく、きみのもとへと急がせる。
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。

草原と野原の間にひとりの女の子が立っていた、
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。
目の上に手をかざして、
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。

草原を野原を越え
山を森を越え
彼が私のもとへ急いでやって来るわ。
ああ、早く来てくれないかしら。
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

男の子を見ている目線から、男の子の目線へ、そして彼を待っている女の子を見ている目線、女の子の目線へと歌われます。

とても可愛い曲です。

が、R.シュトラウスらしく歌うのは大変(^_^;)

最初の頃は、戦闘にでも行くのかという歌い方でした(笑)。

テンポを変えたり、色々工夫しまして、なんとか初々しい恋人っぽくしています!

前半の彼の目線では

kling klang, schlug ihm(彼) das Herz.

後半の彼女の目線では
kling klang, schlug ihr(彼女) das Herz.

という歌詞なのですが、早口すぎるので、聞き取れへんやろ!

と思っていましたが、やはりこのクラスの作曲家は天才!!

和音が違うのです!

ihm(彼) と ihr(彼女) が聞き取れなくても、それらしく聞こえるようにできている!

ぜひ、会場でお聞き下さいませ~

では、次回は、いよいよ後半の「詩人の恋」へ!!!

曲目解説_R.シュトラウス_その1

前半の最後の3部目

R.シュトラウスです。

まず、一曲目

Die Nacht

H.v.ギルムの作詞です。

夜が森から歩み出て
木々の間を静かに忍び歩き
広い世界を見回す。
さあ気を付けなさい。

・・・

何もかも奪われた藪が立っている。
心と心よ絆を強めなさい。
ああ、私は心配だ、
夜があなたを盗んでしまわないかと。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

静かに始まり、そしてR.シュトラウスらしい大きなうねりの音楽に変化していきます。

最後は、また静になるのですが、夜に怯える感じがとても良く表現されています!

Die Zeitlose
イヌサフラン

同じくギルムの曲で、Die Nachtと同じ Op.10に入っています。

刈り取られたばかりの牧草に
イヌサフランが孤独に咲いている。
形はユリに似て、
色はバラに似ている。

けれども赤く光るけがれない
うてなには毒がある。
最後の花、最後の愛どちらも美しい。
だが命取りとなる。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

最初は、イヌサフランの様子を淡々と、しかし、壮大に表現しています。

が、「けれども」と訳した、Doch から毒々しい表現に変わります。
最後のピアノ伴奏は、おどろおどろしていて、短い曲ですが変化にとんで興味深い曲です!

次回は、残りの二曲を!!