曲目解説_シューマン「詩人の恋」_その2

「詩人の恋」の続きです。

2. Aus meinen Tränen spriesen

僕の涙から
色とりどりの花が咲き出でて、
ため息は小夜鳴き鳥の歌になる。

かわいい人よ、僕を愛してくれるなら
この花をすべて贈るよ、
そして、きみの窓辺で小夜鳴き鳥の歌を響かせよう。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

1曲目の後奏から、アタッカで入ります。

夢見心地で恋をしている音楽です。

この辺りは、歌っていて幸せなのでストレスがありません(笑)。

3. Die Rose,die Lilje,die Taube,die Sonne

バラ、ユリ、鳩、太陽。
かつて僕が心から愛していたものだ。
もうどれも好きではない、僕が愛するのは一人だけ
小柄で、上品で、清らかな、一人のひと、
その人こそ、すべての愛の喜び
バラで、ユリで、鳩で、太陽なんだ。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

超早口言葉です!
ダーーーーーーっと歌います(笑)。

とにかく、何でも良い!美しいものを並べ立て、それらよりきみの方が素晴らしいんだーーーと歌っています!

4. Wenn ich in deine Augen seh’

きみの瞳を見つめる時
すべての苦しみや痛みが消え、
もし口づけをしたなら
すっかり元気になるだろう。

・・・
きみが「あなたを愛しています」と言うと、
僕は苦しくて泣いてしまう。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

さあ、最後の方雲行きが怪しくなってきましたよ~

so mus ich weinen bitterlich.

bitterlich って、とてもネガティブなドイツ語らしいんです。
なぜ、愛しています、と言われてネガティブになるの?

ここに、屈折した詩人の心境が見え隠れ!

あ、でも本当に1~2小節の一瞬の出来事なんです。
リートは、ほんの一瞬にいろんな感情の変化を織り交ぜます。

そこが難しくて楽しいんですね~

ところで、この詩を読んで、この詩人さんは彼女と口づけをしたと思います?

解釈は人それぞれです。

本当に一瞬恋人だった時があったのか、それとも彼の妄想なのか!

続きます!

曲目解説_シューマン「詩人の恋」_その1

後半は、
Robert Schumann による連作歌曲「詩人の恋」
Dichterliebe Op.48

です。

この、「詩人の恋」は通常、男性が歌う曲。
声の高い男性テノール用と、低い声のベース用とあります。

女性でも、ナタリー・シュトゥッツマンとか声の低い歌手のCDは持っていました。

そして、ソプラノのバーバラ・ボニーのCDを発見した時に、私も歌ってみたい!と思ったんですね~

しかし、声の細い私が歌うのは、山あり谷あり(笑)。
1年近くかけて、なんとか形に仕上げました!

歌詞はH.ハイネ。

ハイネの詩集「歌の本(Buch der Lieder)」64篇の中から16篇が抜き出されて、クララとの結婚を控えたシューマンは、1840年の5月に一気に作曲しました。

ハイネは毒のある詩を書きます。
シューマンは結婚を控えているとは言え、後に精神病に悩まされるこれまた毒の強いお方。
この二人がタッグを組んだら、そりゃあもう(笑)。

この「詩人の恋」では、16曲すべて幸せ~なだけで終わっているものはありません。
歌は幸せそうでも、ピアノの後奏は意味ありげな暗い和音だったり!

あ!シューマンは、前奏が短く後奏が長いのが特徴です。
ずっとこのスタイルが苦手だったのですが、この連作歌曲に取り組んで、まったく苦手はなくなりました!

では、まず1曲目

1. Im wunderschönen Monat Mai

美しい五月に
すべての蕾が花開いた時、
僕の心にも
恋が芽吹いたんだ。

・・・

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

Adurの美しい前奏から始まります。

ドイツは、突然春がやってきます。
日本のように三寒四温ではなく、「はい!今日から春です!」って感じで、
五月に突然春がやってきます。

それまで、寒くて鬱々としてた冬から、あこがれの春!

その春と時を同じくして、この詩人さんは恋をするんですね~

でも、ピアノの後奏がなにやら、悲しげな感じで終わります。

今日は、能書きが多かったので、続きはまた明日(笑)。

曲目解説_R.シュトラウス_その2

前半最後、R.シュトラウスの後半です。

Freundliche Vision
懐かしい面影

O.J.ビーアバウム の詩です。
Op.48-1 同じOp.48には、有名な「Kling!」があるのですが、他の曲と合わないので、こちらを選択。
なかなか、渋い選択です!

眠りの中で夢見たのではなく
明るい昼間に美しく私の前にあるのを見た。

マーガレットにあふれる草原、
緑の茂みの奥深くにある白い家、
葉の間から神々の姿が輝く。

そして私を愛してくれる人と共に行く
涼しさの中を穏やかな心で。

美しさに満ちた平穏のこの白い家が待っている
私たちが来るのを。

・・・
訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

ピアノのゆったりした分散和音が、徐々に展開して変化していきます。

歌の旋律は、R.シュトラウスにしては、比較的おだやか。

しかし、その合間に、シュトラウスならではのオシャレな装飾がす~っと入っています。

大きなうねりで盛り上がって、静かに終わっていく、幸せですが厳かで壮大な曲になっています。

Schlagende Herzen
ときめく心

こちらも O.J.ビーアバウム の詩です。


草原を野原を一人の少年が行く、
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。
指には金の指輪が輝く、
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。

・・・

草原を野原を春の風が通り過ぎる。
山を森を春の風が通り過ぎる。
僕の心の中も春の風が通り過ぎ
静かにやさしく、きみのもとへと急がせる。
ドキドキ 彼の胸は躍っていた。

草原と野原の間にひとりの女の子が立っていた、
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。
目の上に手をかざして、
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。

草原を野原を越え
山を森を越え
彼が私のもとへ急いでやって来るわ。
ああ、早く来てくれないかしら。
ドキドキ 彼女の胸は躍っていた。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

男の子を見ている目線から、男の子の目線へ、そして彼を待っている女の子を見ている目線、女の子の目線へと歌われます。

とても可愛い曲です。

が、R.シュトラウスらしく歌うのは大変(^_^;)

最初の頃は、戦闘にでも行くのかという歌い方でした(笑)。

テンポを変えたり、色々工夫しまして、なんとか初々しい恋人っぽくしています!

前半の彼の目線では

kling klang, schlug ihm(彼) das Herz.

後半の彼女の目線では
kling klang, schlug ihr(彼女) das Herz.

という歌詞なのですが、早口すぎるので、聞き取れへんやろ!

と思っていましたが、やはりこのクラスの作曲家は天才!!

和音が違うのです!

ihm(彼) と ihr(彼女) が聞き取れなくても、それらしく聞こえるようにできている!

ぜひ、会場でお聞き下さいませ~

では、次回は、いよいよ後半の「詩人の恋」へ!!!

軽い!

リサイタルに向けて、怒涛のレッスンと合わせ!

バレエのレッスンをサボリ気味だったのですが、いざドレスを着てみたら、
あら、お肉が!となっては困るので、久しぶりに水曜日に行ってきました。

久しぶりなので、ポアント(トウシューズ)は足の指が痛くなるだろうなと覚悟してたのに、まったく大丈夫!

なぜ!?

そうか、飲みに行ってないから、身体が軽いんだ!!!(笑)

そう言えば、いつも買っているドレスサロンのオーナーさんが、
願掛けにお酒をしばらくやめたら、激ヤセしたって言ってたな~

でも、リサイタル終わったら飲む(笑)。

曲目解説_R.シュトラウス_その1

前半の最後の3部目

R.シュトラウスです。

まず、一曲目

Die Nacht

H.v.ギルムの作詞です。

夜が森から歩み出て
木々の間を静かに忍び歩き
広い世界を見回す。
さあ気を付けなさい。

・・・

何もかも奪われた藪が立っている。
心と心よ絆を強めなさい。
ああ、私は心配だ、
夜があなたを盗んでしまわないかと。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

静かに始まり、そしてR.シュトラウスらしい大きなうねりの音楽に変化していきます。

最後は、また静になるのですが、夜に怯える感じがとても良く表現されています!

Die Zeitlose
イヌサフラン

同じくギルムの曲で、Die Nachtと同じ Op.10に入っています。

刈り取られたばかりの牧草に
イヌサフランが孤独に咲いている。
形はユリに似て、
色はバラに似ている。

けれども赤く光るけがれない
うてなには毒がある。
最後の花、最後の愛どちらも美しい。
だが命取りとなる。

訳詞;田村靖子 無断転写を禁じます。

最初は、イヌサフランの様子を淡々と、しかし、壮大に表現しています。

が、「けれども」と訳した、Doch から毒々しい表現に変わります。
最後のピアノ伴奏は、おどろおどろしていて、短い曲ですが変化にとんで興味深い曲です!

次回は、残りの二曲を!!